これまでの教育は基礎からの積み上げで専門性を身につけるという方針でカリキュラムを組むのが常識になっていたと思います。一方で、知識量がどんどん増え続け、達成感がなかなか得られずに基礎で脱落してしまう人も少なからず存在するという問題点も指摘されています(例えば奈須・江間 2015)。
従来の教科教育は、専門に進む人たちをメインのターゲットにしてきた。しかも、概念的理解より個別知識の量を優先した。その結果、大多数の人たちはどこかでドロップアウトし、最後まで残った人たちが専門に進む。ドロップアウトした人たちには、個別知識のかけらしか残らない。だから好きになるわけがないし、概念的理解が形成されていないから、仮に先々学ぶ必要があったとしても、学校での学びが十分にその支えにはならない。(出典:奈須・江間(編著)『教科の本質から迫るコンピテンシーベイスの授業づくり』,明治図書, 2015, p.155)
ここでは、基礎を学ぶ前にそれがどのように役に立つかを先に示す、という方針で組まれた「ストーリー中心型カリキュラム」を導入した熊本大学の事例を紹介します(より詳細にはBEATセミナー資料、書籍を参照ください)。ビデオをご覧になって、基礎からの積み上げ以外の方法で教育課程を構築することができないか、研究者養成以外のカリキュラムでも基礎からの積み上げしかないのかなど、討議してください。